2018年12月9日日曜日

記憶ばかりが華やいで

 あれは昭和六十年一月二日、後楽園ホールでのこと。当時中学一年生だった私は級友と連れだって全日本プロレスの試合を観戦に行ったのだった。
 現地に到着したのが試合開始の四十分ほど前。じゃあ俺売店でパンフレットと飲み物を買ってくるわ。なんつってホール入場口から少し脇に入ったところにある売店に赴いた。買い求めたパンフレット二冊を小脇に抱え、飲み物軽食の売り場で紙コップに入れられたコーラ二杯を両手に持ったら文字通り手一杯。真冬のことで分厚い上着を着ているから脇に挟んだパンフレットが滑り落ちそうになるのを堪え、しかしそうしていると手に持ったコーラが危うくなる。あれ、これはこうしてこう持って、おっとっとこっちを落としたら大変、などと、中学一年生の足らない頭脳をフル回転させつつ、売店の側で立ち往生していたら、いきなり誰かにこめかみの辺りを小突かれた。
 なんぞ、と思って振り返ったらそこにいたのはダイナマイト・キッド。苛立たしげな表情で私を見やるキッド、その後ろには当時のタッグ・パートナーだったデイビーボーイ・スミスをはじめとする外国人選手たちが居並んでいる。私がすぐさま道を譲ると、その前をキッド以下、外国人選手たちは控室に向かって悠然と歩いて行く。その後ろ姿を、人前で小突かれたというみっともない自分の状況も忘れて惚けたように眺めていた。
 やがて試合が始まり、キッドはスミスとタッグを組んで中盤の試合に出場した。私はその日、リングサイド最前列に座っていた。テーマ曲に乗って入場しリングに上がったキッド、リングサイド最前列に座っていた私を見つけたらしく、レフェリーのタイガー服部となにやらヒソヒソと話をしつつ、私に視線を送ってきて面白そうにニヤリと笑った。

 閑話休題

 ああいやだ。ダイナマイト・キッドがこの世からいなくなるなんて嫌だ。しかしながらキッドの、この二十年ほど続いた苦しい境遇をを思うとようやく楽になれたのかもしれないという気もする。
 なんだかみんな想い出の中だけの存在になっていく。でも沢山観た。タイガーマスクとの試合も、コブラとスミスと三つ巴でタイトルを争った試合も、三沢タイガーとの試合も、大怪我から復帰した後のカリカリに痩せちゃった姿も、全日本の最強タッグの最終戦の武道館で急に引退を発表したことも、みちのくプロレスでタイガーマスクやドス・カラスや小林邦昭と試合をしたことも、沢山沢山観た。
 結局は、観ることと忘れないでいることしかできないんだよなファンって。だからちゃんと観ないといけないんだ。

 閑話休題

 しかしあのあおり運転の若者は如何にも反省がないというか、正確を記すれば、反省の仕方が判らない/知らないみたいな風に見える。どうやら自分はとてつもなく悪いことをしたみたいだけれども、果たしてその後処理としてどうしていいか判らない、どう感じてどう受け止めてどう行動したらいいか全然判らない。みたいな言動に見える。
 それにしても近頃改めて思うのは、なんというかこの世の中には、人から舐められるということを極度に嫌い、それをされた(と、感じたら)ら、たとい相手を身体的に痛めつけたとて構わない、と頭から思い込んでいる困った人が殊の外多くいるということで、こういう人々が齎す危険から身を遠ざけるには、やはりなるべく近寄らないようにするしかないなあ、と考える次第。あれは関わったらダメな奴だというのを見定める目を養い、そこからなるべく身を遠ざけるようにするしかない。なにしろ相手はまともな会話が成立しないような連中なんだから。
 そう考えると、ほんと最近の接客業は大変だろうね、ああいうの増えちゃったし。またSNSに上げるのを目的として因縁を吹っ掛けてくるのも増えたみたいだし。

 閑話休題

 昔は面白がって観ていたけれど、一旦休止する前の最後の方から、笑いって点数をつけて優劣を競うようなものじゃないよなあ、と思い始めたからM-1系のグランプリものを観たいと思わなくなった。笑いなんて基準があるようで無いし、無いようである、みたいなものだから、審査して優劣を決するなんていうのは無理。同じ人が同じネタをやったところで場所と客が違えば笑いの量が違ってくるのは当然のことで、そういうものを審査して点数を与えて優劣を競うなんて無理だと思う。まあその審査すらもM-1を構成するエンタテインメントになっているというのは理解するけれども、なんというか、笑いの持つ魅力と審査の勝ち抜きのという要素は、根源的にそりが合わないような気がする。

 閑話休題

 僕自身は後からビデオで観たクチだけれども、海原千里・万里の漫才は面白かったなあ。上手くて面白くて華があって若いに似ず妙な貫禄があって。もしもあのコンビが80年代初頭の漫才ブームまで現役でいたら、やすきよの次が千里・万里、ぐらいの感じになったんじゃないかしらん。その後の笑いの勢力図も変わっていただろうね。

 閑話休題

 ほんと、繰り返しになるけど笑いなんて勝ち負けで見るもんじゃないよ。ただただ面白がって見ればいいだけ。これは面白いから好き、これはあんまり、とか思って観ればいいだけ。

 閑話休題

 ではそんなことでお後がよろしいようで。ベイスターズ四位に終わってるのに主力の年俸がぐんぐん上がってて正直大丈夫かなと思う。昔みたいに変に金銭闘争されると企業イメージが悪くなるのかな。思い起こせば私が小供の頃なんて必ず斉藤明夫と高木豊が年俸で揉めてたっけね。斉藤明夫は年明けまで交渉がもつれて自主トレやキャンプに自費参加したこともあったし、高木豊は年俸調停にまで持ち込んでた。やっぱりFAがなかった時代だから、選手側の権利が小さかったんだろう。いまはそれが増大したぶん逆に、すぐに球団から大減俸をされたりクビを切られるようになったけどね。



ありがとうございました。これからもよろしく。

 とりあえずこのWeb日記と云い張っていたブログは今日でおしまいにします。  閑話休題  昨年の五月、置かれた状況・環境に翻弄されてすっかり減退してしまった創作意欲に再び火をつけて、みやかけおを再起動するのを目的に、ブレインストーム的にブログを始めたのですが、あれから一年...