2019年2月10日日曜日

おもしろきこともなき世をおもしろく

 そうして僕は今年も旧暦の正月に合わせて神田明神へ初詣に行ったのだった。偉そうなことを云っているが僕は神田明神に足を踏み入れたのはこれが初めてだ。秋葉原には、御茶ノ水には、それこそ若い時分から数限りなく足を運んでいるというのにどういうわけか神田明神には入ったことがなかった。湯島聖堂ですら何度か入ったことがあったというのに神田明神には入ったことがなかった。なぜここまで神田明神に入らなかったのか理由はよくわからない。神田祭の喧騒が嫌だったのかもしれない。そうして今回、御茶ノ水の駅から聖橋を渡ってその鳥居を見た瞬間にうわ、俺ここ好き。と思った。境内その他があまり広くないのがいい。浅草寺のようにさあいらっしゃいと観光客を呼び込むような感覚がさほど感じられないのもいい。しかしそれらは後付けの理由で好きと思ったことに理由はない。一目惚れの如くただただ好いと思ったばかりだ。早速手水を使ってからお参りをし、珍しいIT守護のお守りを買い、ついでに、普段滅多に引かぬおみくじを引いたら大吉が出てますます僕はここが好きになった。そうして気分の高まりを感じつつ、嗚呼、江戸時代の人たちもいまこの時期、正月の空気を感じながらここに来たのかと、旧の正月に神社仏閣へ来ると必ず思うことを思ってから神田明神を後にした。

 閑話休題

 いやそりゃあ現代ということに合わせるならばインスタグラムに境内の写真をぽんぽん載せて、とどめに大吉のおみくじを写真に撮ってアップするのがいいんだろうけど、インターネット老人会の矜持としてそれは出来んのですよ。それをしないことで出てくる面白さもあるのじゃないかと思ってね。ないかそんなもん。でもほら、写真は基本的に嘘がつけないでしょう。誇張ができないでしょう。文章だとそれができるでしょう。写真を弄って嘘や誇張をやるとマジで駄目なやつになっちゃうでしょう。不自由だから自由になれることもあるのですよ。

 閑話休題

 このところすっかり鳴りを潜めていたバカッターが次々に現れているようで僕はちょっと心楽しい。面白い、ということに対して徹底的に、あるいはテッテ的にセンスの欠落した人が”面白いこと”をやろうとしたときの無残な感じが濃密な感じで横溢していて、ほんと見ていて心楽しくなる。

 閑話休題

 数年前のバカッター第一世代と当節のバカッターを比べてみると、おそらくだけど、当節のバカッターはYouTuberのノリを真似てやってるんじゃないかな。

 閑話休題

 しかしほんと、SNS以降のインターネットを閲していると、そんなに面白くしなくていいよ。もっと普通に何事もない感じで生きなよ。という気持ちになる。日々の暮らしなんてそんなに面白くないほうがいいと思うけどね。あんまり”面白い”ばかりを求めて生きていると、生活の中に遍在する生活や人間の可笑しみ、みたいな、本当に面白いこと(それはおそらく古典落語的ということなるんだろう)を悉く見落とすような気がするよ。

 閑話休題

 話は変わるが「いま一番チケットの取れない落語家」みたいなフレーズってなんか変だよなあ。落語は寄席で楽しむのが本来だから、落語家個人とチケットの売り上げそのものを直接的に結びつけることにちょっと違和感がある。もちろん当節はホール落語がメインの時代だから、時代感覚として間違ってはいないんだけど、なんかやっぱり釈然としない感じがする。いくら時代が変わっても、本来/本筋をまるで存在しないもののように取り扱ってはいけないと思う。
 ましてこれが神田松之丞氏に冠せられている「いま一番チケットの取れない講談師」となるともはや、頭の悪い人が無批判に使う駄目なフレーズに堕落してしまっている。講談師がホール形式の独演会で千人単位の動員を当たり前のように果たした例など過去にほぼなかったわけで、つまりは比較対象が無いのに「一番チケットが取れない」もクソも無いだろう、と思うんである。要は耳馴染みのあるフレーズに神田松之丞氏の存在を当てはめているだけで、なんつーか、センスがないってこういうことだよなあ、と思う。

 閑話休題

 神田松之丞氏を見ていてすごいと思わされるのは、氏のラジオなどを聴いていると、いま、キャリアを含め笑いのポジション的にトップグループに位置している爆笑問題や立川志らく師、伊集院光氏などの存在が古いものに見えてしまうこと。これら世代の人たちが古く見えるという経験は初めてのことで、いや、本当にすごいものだと思う。
 おそらく、談志家元が小ゑんとして、志ん朝師が朝太として世の中に現れた時には、他の落語家が古く見えただろうし、事実、ビートたけし師が現れた時も欽ちゃんやドリフが古いものに見えた。今の時代にあってその瞬間がまた見られるというのはすごいことだと本当に思う。
 
 閑話休題

 ではそんなことでお後がよろしいようで。ほんと、日曜日の朝っぱらからこんなことを書いて一体なにをやってるんでしょうかね私は。おそらくは私と同じくらいの歳格好と思しき精神科医の人などふた回りも年若の有安杏果ちゃんと付き合っているというのに。

ありがとうございました。これからもよろしく。

 とりあえずこのWeb日記と云い張っていたブログは今日でおしまいにします。  閑話休題  昨年の五月、置かれた状況・環境に翻弄されてすっかり減退してしまった創作意欲に再び火をつけて、みやかけおを再起動するのを目的に、ブレインストーム的にブログを始めたのですが、あれから一年...